[囲碁の話 1 ]
 いま古稀を過ぎて改めて趣味の囲碁を振り返ると、随分人生を彩りに満ちたものにしてくれたなぁという思いがします。
 私と囲碁の出会いは就職してからですが、幼い頃良く自転車に乗せられて、父親の囲碁友達の家に連れていかれた事を思い出します。
 父親は多分、当時初段位だったと思います。
 最初に囲碁を憶えた日田市の職場から程なく他所に転勤しましたが、この時代は土・日に中津の碁会所に通い、真夜中の帰宅もたびたびでした。
 当時の加藤青年は大分合同本因坊にはなれなくても、大分県で10本の指に入ってやると本気で思っていましたが、程なく現実の厳しさを知る事になります。
 その時は父親が少年期に囲碁を教えていてくれたらなぁと何度も思いました。
 囲碁に限らずボードゲームは覚えるのは早ければ早い方が断然良いと言われています。
 話題の最年少棋士・仲村菫ちゃんは3歳で囲碁の終局が出来たそうです。
 囲碁をする人は分かると思いますが、これは驚異的な事で菫ちゃんの将来がとても楽しみです。
 大分県の囲碁トップテンは諦めましたが、各地の囲碁会や大分合同新聞の本因坊挑戦者決定戦に地区代表で出場した事も有り、新聞に棋譜が載った事も何回か有ります。
 また、職場互助会の大会のクラス別で優勝し、日本棋院三段の正式免状(費用は全て互助会)を貰いました。
 後日、六段の免状を取る機会が有りましたが、三段から一気に六段の免状を取ろうとすると、目玉の飛び出る申請料が必要になります。・・・で、止めました(笑)。 
 宇佐市の職場では、強豪の室先生・石川氏が居て良く教わりました。
 その後日田市に転勤になってからは、日田林工高校囲碁部顧問の佐藤先生や高瀬先生、地域の方達と親しくさせて頂きました。
 最近では全く碁は打たなくなり専らネット観戦ですが、昔名人や本因坊を沢山取った人が初段の方に負けるのを見ると複雑な気持ちがします。
「麒麟も老れば駑馬」ですか。何れにしろ囲碁と出会えた事にとても感謝しています。
 
 
       [囲碁の話 2 ]
 現在、囲碁・将棋の女流棋士はたくさんいます。
 ただし囲碁でいえば七大タイトルの獲得・挑戦者はまだかって一人もおりません。
 三大タイトル(棋聖・名人・本因坊)は、挑戦者を選ぶリーグ(棋聖Cリーグを除く)入りさえ果たした女性はいません。
 将棋は四段以上を「プロ棋士」と呼ぶそうですが、これも過去を振り返っても一人もいません。
 この極端な成績差はどうしてでしょうか。
「女性は家事・育児があるから」とか、「勉強量が違うから」とかの意見も聞きましたが、結婚前は関係ないはずだし、大学等をみても女性の方が真面目に勉強に取り組んでいるように思えます。
 これは全くの私見ですが、人類は数十万年に渡って体力的な特徴から男性は主に狩猟を行い、女性は植物採取・育児などの家事を行ってきたと思います。
 男性は獲物をし止めるために人員を適正に配置して、獲物を追いかけ、待ち伏せをし、罠を仕掛け、獲物を追い詰めただろうと思います。
 これは将棋の戦術と全く一緒です。
 将棋の方が分かりやすいと思いますが囲碁も一緒です。
 これを男性は数十万年繰り返して来たわけですから、このやり方が男性のDNAに深く刻まれていると思います。
 これが極端な男女間の成績差を生んでいるのではと私は考えています。
 私は誰もが知るフェミニストですし(笑)、女性の方が男性より優れている分野などは山ほどありますが、こと囲碁・将棋・チェスなどのボードゲームに限っていえば、女性の脳より男性の脳の方が向いているのではないかと思っています。
 とはいえ、最近では謝さん(女流棋士)が名人リーグに後一歩まで迫りましたし、女流のトップがリーグに入る日も近いかも知れません。私はその日が来るのをとても楽しみにしています。
 
 
       [囲碁の話 3 ] 
  私はかれこれ半世紀程、囲碁を打った事になりますが、その内で一番の大変化はAIの登場です。
 チェスではとっくの昔に「世界チャンピオン」は「ディープブルー」というコンピューターでしたが、ルールの良く似た将棋は捕虜にした駒を又自軍の兵士として使えるので「場合の数」が増え、中々強くなりませんでした。
 その将棋は9×9升で最初から自軍・敵軍の駒で埋まっていますが、囲碁は最初の打点が19×19も有りますから物凄い「場合の数」で、その上取られた石の抜き後に打ったり、「劫」というルールも有ります。
 囲碁を打った記録を棋譜と言いますが、囲碁の変化の全てを棋譜にしてその紙を積み重ねると、銀河系を何周もするそうです。
 なので最初は囲碁ソフトはとても弱かったのですが、コンピューターの処理能力の進化と、自分自身で考える(AI)という手法が考えだされたので、現在では途方もなく強くなってしまいました。
 現在、世界のトップは残念ながら韓国・中国ですが、そのトップの中のトップでもハンディを貰わなければ、コンピューターに勝てません。
 私は若い頃、囲碁は千局打てば初段と言われましたが、今のグーグル等のコンピューターは数日間で、数百万局自己対局するそうですから、そんな疲れを知らない・飽きない勉強家に人間が勝てる訳が有りません(笑)。
 面白いことに私が若い頃から打ってきたかなりの定石(こう打てば互角になりますという手順)が、コンピューターによって否定されています。
 これには今まで理論を示してアマチュアを指導してきたプロも、戸惑っているようです。
 そして又、人間は「そんな汚い手は死んでも打たん」とか「相手が悪手を打ったので、やる気を無くした」とか面白いエピソードがたくさん有りますが、コンピューターは勝てば良いのでそんな事とは無関係です。
 味もそっけも無いものですが生活のかかっているプロも、アマチュアも勝つために序盤はコンピューターの手順どうりに打つので、最近の殆どの碁の序盤は同じ風景です。
 コンピューターと違う手順を打つとたちまちコンピューターが示す勝率が下がるので、誰も個性的な序盤は打たなくなりました。
 かっての「宇宙流」・「小林流」等の個性的な序盤の手法はもう見かけません。
 それが私などには味気なくつまらないものに思えます・・・が、流石に中盤以降にはもうコンピューターの真似は出来なくなり、棋士の能力や個性が発揮されて面白くなります。