黒の雄の柴犬「けんたろう」は生後半年位で我が家に来ました。
 血統書付きなのですが、体高が足りないのでコンクールに出せないと言うことで、時々流行りのミニ柴と間違えられました。
 それからの毎日は一緒に朝の散歩をする事が日課となりました。
 私も自分の健康の為には運動が大切との自覚は有りましたが、やはり寒い日や風の日は散歩が億劫になります。
 でもけんたろうのストレスを考えると「よし、行こう」という気持ちになりました。
 それからの長い付き合いの間には大型の犬にけんたろうが襲われて、蹴りつけた私の足にその犬が噛みついたり、伸び縮みのリードにおじいさんが絡まってこけたりなどのハプニングも有りました。
 歩いて行ける所は何時も一緒でしたが、亀川の水産祭に出かけて会場の木に繋いでいた時は、リードの紐を食い千切って逃亡しました。
 慌てて捜し回りましたが見つかりません。
 近くの保健所や警察に届けましたが、家と会場の間は距離も有り国道も有るので半分諦めました。
 道に黒猫が轢かれていたのを見つけた時には、一瞬凍りつきました。
 2日後に出勤前に少し又車で捜そうと思い、玄関ドアを開けるとそこにけんたろうが立っていました。
 無事でしたが額に旗本退屈男の様な傷を負って居たので、オロナインをすりこんでやりましたが(笑)、その時の喜びは今でもはっきり憶えています。
 私は出来るだけ長く山に登り続けたいと思い、退職後も体力維持のため、結構熱心に散歩に取り組んで来ましたが、ある時けんたろうに「ん、歩くのが遅くなった?」と感じて以来けんたろうは徐々に弱って来ました。
 それからは祖父の事を思い起こす様な老犬介護が始まりました。
 そして最期はクリスマスイブの日の夜に天国へ旅立ちました。
 けんたろうの墓は狭い庭の片隅に有り、墓石は木曽川から(特に意味は有りませんが)持帰りました。
 15年の共に生活の日々でしたが、犬の年齢は×7倍と聞いた事が有りますので寿命をまっとうしたと思うようにしています。
 軽いペットロスの様なものも有りましたが、今でもけんたろうは私に飼われて幸せだったろうかと思う事が有ります。
 体力的に車中泊旅行が出来なくなったら又、柴犬を飼いたいと思っています。